MONO thingsfrom RCA-KCUA exchange

Interviews 
卒業生が語る交換留学

藤田紗衣 x 金田勝一 インタビュー

作家活動のほか本学非常勤講師としても教鞭をとる藤田さんと,油画専攻金田教授。留学した年はそれぞれ1994年と2015年と21年の開きがあります。ちょっとした世代の違いをかみしめながら,それぞれのユニークな経験を語っていただきました。
(聞き手:橋爪皓佐)

留学当初を振り返って

橋爪: RCAから帰国した五年前と,現在とで印象も変わって来たかと思いますが,まず日本を出発した頃のことを話していただけますか?

藤田:学部からずっと京芸だったので,環境を変えたいというのが留学の一つのきっかけでした。それまで,海外へ一人で行った経験がなく,結構準備もバタバタで,慌てながら出発しました。イギリスに到着してから,最初は十日間くらいゲストハウスに滞在して。

金田:それはどうやって見つけたん?

藤田:前の年に留学した先輩から,日本人がやっているいいところがあるよって教えてもらって。ゲストハウスなら色んな現地の情報が貰えるかなと思って。それとネットを使って家探しを……

金田:あぁネットが使える時代ね。使えない時代もあったよ(笑)

藤田:めっちゃ大変ですよね(笑)ネットがなければ一人で行けなかったなと思います。
最初は,午前は語学学校に,午後は家の内見に行って,そのあと家探しに行くか,ギャラリーか美術館に行くか,という過ごし方を10日間くらいしていました。

金田:学校が始まるどのくらい前から向こうに入ったの?

藤田:結構ギリギリ,9月の1週目,6日とか7日とかです。9月の末くらいからオリエンテーションが始まって,それから,何日後にテムズ川クルーズがあって。

金田:そんなんあるんやね!

藤田: そうそう。そういうのに行ってみて,英語で喋りまくって。でもそういうこと,未経験すぎて,家に帰ってから,熱出ました(笑)

金田: まぁそら出るやろうな!(笑) そのテムズ川クルーズ船のパーティではクラスごとに分けられてるの?

藤田: そんなことなくて,その場に居た人と喋るみたいな。そこで結構色んな専攻の人と仲良くなって。参加しなければ出会うこともなかったので,そこで出会えてよかったかなぁと思います。
※ファインアート系とデザイン系は別キャンパスに分かれている。

金田:ちゃんとしてるぜ!

藤田:してるぜ(笑)

金田:僕が行ったん94年とかやからな。そりゃ感じも全然違うんやろうけど。いきなり行って,紹介されて,課題の説明されて…

藤田:すごいっすね…

金田:うん。ドキドキやった。いきなりクラスに入った感じやったね。でもアートバーっていうのがあって助かったわ。

橋爪:アートバーというのは,なんですか?

金田:学校の中にパブがあるねん。

藤田:ありました行きました。

金田:作業が終わったらみんなで行こっか,みたいな感じで。お酒飲むから,普段やったら,英語やし,意味あってるか分からんからって,喋るのをためらってしまうことでも,わーっと喋ってしまう。向こうもみんなフランクに喋ってくれるし。それのおかげで本当に助かったね。友達も出来たし。

藤田:確かに。

金田:僕アニメーション科に行っててんけど,他専攻の学生とも喋れるし。先生とも喋れるし。アードマン・アニメーションズの社長とも飲みに行ったで!

藤田:すごい!

金田:「ウォレスとグルミット」の人たちね。そこの社長さんが講師として教えに来てて。その人とアートバーに飲みに行って,みんなで作品の話とか聞けたりするわけやん。大学院大学ということもあってみんな大人やし。なんかあったらそこ(アートバー)に行ってたね。

橋爪:やっぱり日本と違ってキャッシュ・オンで飲めるっていうのが,気軽に行きやすいんですかね。

藤田:確かに。小銭チャラチャラして。

橋爪:みんなで居酒屋入って,ってなるとそこまで気軽には行けないかも。

金田:あーそうなるか!

橋爪:先生とも一杯だけ飲みに行ったりできるじゃないですか,イギリスだと。

藤田:確かに。

橋爪:アートや文化の作られていく過程の違いっていうのも,そんな所にもあるのかもしれないですね。

滞在中の旅行

橋爪:学外のこともお聞きしたいです。旅行などは行かれましたか?

藤田:旅行はよくしました。ロンドン内の他には,パリと,ヴェネチアと。それとスコットランド。

金田:僕もエジンバラ,行ったね。

藤田:行きました?すごい良いとこですよね。

金田:音楽とか演劇のフェスティバルあるやん。エディンバラ​・フェスティバルか。ほぼ無料で,いろんなショーとかコメディとか。坂本龍一とか,トーキョー・ショック・ボーイズとか観たで。

橋爪:なるほど。そういえば藤田さんは,スコットランドで少し暗い思い出があるとか?

藤田:別に暗くはないんですけど(笑 

金田:ちゃんとした留学生やなぁ!

藤田:一人で旅行に行こうと思って。ストーンヘンジとか,そういう「伝説」的な場所に行きたくって,ネス湖*ってイギリスにあるなって気づいて。ネッシー・ミュージアムみたいのもあって,映像資料なんかもいっぱいあるって書いてあって,絶対面白いと思って。

金田:ははは! 行きたいねぇ!

藤田:これは行くしかない!と思って。まずエジンバラと,グラスゴーでギャラリーなんかを見て。それからネス湖へのバスツアーを予約して。ツアーにはミュージアム見学も含まれていると思ってたんですよ。あと湖を船で渡った所にあるお城を見るオプションツアーにも誘われたんですけど,私はミュージアムが見たいから断ったんです。で,バスに乗って,周りが家族連ればかりの中,一人でこう,ちじこまって(笑)ワクワクしながら。それからネッシー・ミュージアムが近づいてきて,あれだ!ここに行くんだ!と思ったら,スーッとそのまま通り過ぎて。そこからもっと先にある船着場にバスが停まって。あれ?なんだこれ?って(笑)

金田:そらやられたなー。

藤田:ミュージアムはツアーに入ってない?って,ガイドの人に聞いてみたら入ってないよって言われて。歩いて行ってきても良いですか?って聞いたら,危ないからやめた方が良いって言われて。行けなかったっていう…船着き場のカフェでお茶飲みながら,ネッシーの銅像とか眺めて(笑 一人で(笑

金田:良いなぁそのぼーっとしてる感じが! 交換留学生っぽいよね。

藤田:ちょっと寂しかった…天気もすごく悪くて。景色はすごかったですけどね。

金田:お城も見れず,ネッシーも見れず(笑)

藤田:ほんとなんもねーんだなって(笑 悔しくって。悲しくって。お土産やさんは見れたんで,それもまぁ面白かったですけどね。とりあえずネッシーのポストカードと,スコットランドのスカート(キルト)はいたおじさんが,スカートめくってるポストカードを(笑)買いました。あわよくば作品になるかと思ったんですけどね。

金田:ならなかったの?そのネス湖の思い出は。

藤田:ならなかったですけど,また行きたいですね。ミュージアムの映像資料がすごい気になってます。

RCAのテクニシャンとのやりとり

橋爪:金田先生はアニメーションをRCAで学ばれたそうですが,94年と現在ではアニメーションの技法が全く変わってしまいましたよね。

金田:そうやね。僕のときがフィルムの最後の時代やったんとちゃうかな。全部フィルムで考えるっていうことで。音もDAT*で録音してくるねん。例えば,サウンド・プロジェクトっていう課題では,グループに一個DAT渡されて,いろんな音を録音してきて,その音を一つのテープにしてしまうねん。例えばレストランの風景なら,かちゃかちゃした食器の音を録音して,ざわざわした人の声と,それと室内でかかってる音楽も。それを3トラック並べて,同時に再生したら,レストランの音が出来上がります,みたいな。
*DAT(デジタル・オーディオ・テープ。2000年代初頭まで高音質録音メディアとして最も一般的だった規格。)

藤田:へー!

金田:それで1分間の話を作れ,っていう課題があって。

橋爪:面白いですね。

金田:そういう機能が今はAdobeのPremierとかAfter Effectsとかに入ってるんやろうけど。でも実際のテープを見ながら,ぐるぐる回しながら,ここで終わりで,とか,そこでフェードアウトを,とか,モノを作るときの基本的な構造を,実際に触って,学びながら作っていけたのはすごいよかったかな。

橋爪:パソコン上だと実感として理解しにくいかもしれませんね。

金田:あと,自分で撮ったフィルム,学校のテクニシャンに現像お願いしたら,自分で現像所に行っておいでって言われて。現像所見せてもらうっていうのはいい経験やった。ロンドンの街中にあるんやけど,かっこよかったなぁ。ボレックス(映画カメラ)とかばーっと並んでたりして。
でもデジタルで作品作ってる子らもいたなぁ。部屋の片隅でオタクっぽい子たちが,任天堂のファミコンみたいなアニメを作ってて。周りはなんでそんなんしてんの?って感じでフィルムの方がいいじゃんっていう時代ではあった。その後一気に変わったんやろけど。

橋爪:時代は変わりますね。ところでテクニシャンの話が少し出たのですが,藤田さんの留学体験記でも,テクニシャンのことに触れていましたね。

藤田:そうそう。RCAの工房にはテクニシャンが常駐していて,その人にまず,やりたいことを見せて,で,刷り台の予約をしないと作業ができなくて。

金田:なるほど。

藤田:それがけっこう大変で。予約してても,急に取り消されてたりとか。あとシルクスクリーンの版を作る製版の工程をやらせてくれなくって。スムーズに自分でやりたいようにってのはできなかったんです。

金田:へー。

藤田:まぁその分空いた時間で,フォトエッチングとかやってみたりして,とか。

金田:なるほど。そのテクニシャンと,つまり職人さんとアーティストが分けられてるってこと?

藤田:そうですね。テクニシャンがいて,その人は技術についてのアドバイスをくれる。で,作品についてアドバイスをくれるチューターが何人かいて,その人たちと定期的に,喋るっていう。私は3回ぐらいだったかな?やっぱ技術について教える人と,(作品の)中身について考える人がはっきり分けられてました。

金田:それは,大きく京芸とは違う。京芸では自分でなんでもしなきゃいけないよね?

藤田:そうですね。

金田:そのテクニシャン達は,RCAの卒業生やったりするの?

藤田:そこまではわかんないですけど,作家さんがテクニシャンになってる場合が多いのかな?シルクスクリーンのテクニシャンも,作家さんらしいです。

金田:面白いよね。そうやってしっかり分けられてるって。

藤田:しっかり分けられていることがいいなぁって思う時もあったし,もっとRCAに長く通っていれば,仲良くなって,製版とかもやらしてもらえるのかもしれないけど,この短期間で自分のやりたいように,テクニシャンと相談しながらやるってのは,最初は難しかったです。

金田:そうやね,何が違うんやろうと考えたけど,例えばシルクやったらインクの量を調整しながら,刷る時も,描くように?こう,調整することはあると思うやけど。

藤田:はい。

金田:それは,テクニシャンに伝える技術がいるということ?

藤田:製版の工程はともかく,刷りの工程自体は,テクニシャンがずっと見てるんですけど,自由にやらせてくれました。ガチガチにコントロールされてる感じではなかったんです。すごく,手厚くサポートしてくれる感じはありました。

制作への影響

橋爪:留学中には新しいことに色々チャレンジされたんですよね?

藤田:はい。留学行く前に一眼レフのカメラ買って,スナップとか撮ってみようと思って,現地で常に持ち歩いてて。ふらっとナショナル・ギャラリーに行くことが多かったんですけど。入場無料で,撮影も出来るっていうのが凄いいいなぁ,ここで作品作りたいなぁ,と思って。で,ちっちゃい紙に,さーっとドローイングを描いて,美術館に入って。それでドローイングに透明の紐をつけて,絵画の前で吊るして写真を撮るっていうのを,ずーっとやってて。

橋爪:それを本にまとめて作品にされたんですよね?

藤田:自分で写真作品を作ってみたくなっても,どういう風に発表したらいいかわからなかったけど,アートブックとか,ジンっていう形式なら出せるなって。そういう手段を見つけれたっていうのは凄いよかったなって思います。

(Drawing goes to museum, 2016)

橋爪:留学前の別のインタビューで,最初は絵画をやっていたけど,版画に興味が移っていったというふに答えてらしたんですけど,さらにそこからロンドンで,ジンを制作するというように,興味が追加されていった感じなんですかね?

藤田:そうですね,留学して思ったのは,印刷技術ってやっぱり面白いなって。友達とかと喋っていても,自分が興味あるのは,版画的なものだとなんとなく感じていて。それまではペイントするのか,プリントするのか,どういうフィールドでやるのがいいか,迷いはあったんですけど,こういう道でやっていけばいけばいいかなって。

橋爪:ロンドンに行った後の作品を拝見すると,版画とか,プリントとっていうものを凄く広く捉えてらっしゃるんだなと思って。アスキーアートとかも使ってますよね。

藤田:はい。たまたま,画像をアスキーアートに変換してくれるサイトを見つけて,ドローイングをアスキーアートに変換して,それも本にしたんですよ。

(BUNDLED AA, 2019)

橋爪:なるほど。フロッタージュの作品もありますよね。

藤田:はい。いろんなことを並行してやってて。リソグラフも,留学しているときに,日本で作られた技術が今ヨーロッパとかで凄い流行ってるんだよって教えてもらって。あ,そういうことなんだ!じゃあやってみようって,思ったのはありますね。

橋爪:そういうことなんだ!っていうのはどういう部分ですか?

藤田:京芸でやってきた流れだと,最初に四版種全部教わって,そっから自分はこれって一つ選んでやっていくという流れだったんですけど,RCAでは,みんなシルクもやるし,リトもやるし。

金田:うんうん。

藤田:色んな版種を,みんなが横断していくような。そのスタイルがいいなって。私にはそれが新鮮で。

金田:基本的には印刷ってことに則って,全てが行われていくってこと?

藤田:そうですね。例えば,専攻の同級生にドラァグクイーンをやっている人がいて,化粧をしてからメイク落としシートに顔を押し付けて,メイクが転写されたシートをそのまま展示したりしていました。

橋爪:なるほど。

藤田:そういう捉え方をしてるんだって思いましたね。

金田:さっき日本でできた技術が向こうに渡っていったって言ってたやんか。

藤田:はい。

金田:その印刷するということが,日本人とは全然違うって思ったこととかある?日本にも印刷や出版の歴史もあるし。だからRCAの版画コースにはこんな色んな人がいるんやっていう理由とか。

藤田:そうですね,捉え方は,もっと…何でしょう。色んな人がいて,銅版画をずっと突き詰めている人もいるし,お化粧して(顔の版画を)ぺって取るとかも。そういうところまで,広げれる幅が,凄い広いなーって。日本とめっちゃ違うな,と思ったわけじゃないんです。よりこう,広がったな,という感じです。

橋爪:帰国してから,色んな技法をやられてるってのもそういう経験からでしょうか。セラミックもやられてますよね?

(DDD(warp), 2020, Silkscreen, Ceramic)

藤田:あぁそうですね! 最近セラミックもやってます。そもそも留学する前は,パネルの作品を作ってて,結構色々やっていたんですが,行き詰まりも感じ始めてて。もうちょっと,薄い平面の中でもっとシンプルにできないのかな,っていうのはずっと思ってて。留学前,最後に,ジェイソンのお面をモチーフにして,作品を作って。これで一旦パネルを辞めよっかなって。その後は,紙にシルクスクリーンで刷るっていう作品になっていって。

(ウェブサイト(外部リンク)の作品を見ながら)
金田:これは留学した後?

藤田:そうですね。この時は,ノートのすみに書いた,作品にしようと思ってないような,なんか電話しながら書いたような落書きを,凄く大きいサイズに引き延ばして,シルクスクリーンで刷るっていうのをやってて。

(Pinch in, Pinch out, 2016
installation view)


金田:だいぶシンプルになったよね!

藤田:そうですね。この時は,白い色の紙を使わないっていうルールを設けてて,これは黒い紙に白場を刷っていくという。

金田:なるほど。

藤田:そういう,画面の中での色の役割とか,どこが前に見えるのかみたいなことを,紙の中でシンプルに考えてみようかなって。

金田:刷って出来上がるときの,魔法みたいなもの?こう,なんていうの?声の出し方が大きくなったというか?

藤田:そうですね(笑)確かに。

金田:刷ったということが,全面に出るようになってきたよね。どこにヒントがあったのかわかります?

藤田:向こうでいろんなことをやって,写真撮ってみたり,フォトエッチングやってみたりとか。あと,ギャラリーでサイ・トゥオンブリーの展示をやってて,その時もんのすごいでっかいペインティングと,ちっちゃいドローイングが並んで掛けてあって。ちっちゃいドローイングに描いてある線を,そのまま拡大したようなのが,おっきいペインティングになっているように見えて,その2つの関係が凄い気になって。ちょっとうまく言えないんですけど(笑

金田:ふーん。

藤田:その,サイ・トゥオンブリーの,鉛筆で描いた小さな線と,おっきいペインティングの線の対比が,凄い印象に残っていて。そっから小さいストロークで描いたものを,おっきくしてみるっていうことをやってみようかなって。

金田:なるほど。その,紙であったり,紙とインクの?構造について,凄い大胆に扱うようにね。そんなんやったあかんちゃうの?ってくらい,インクが乗ってても(笑 すっと行く感じとか。なんか非常に思い切りが良くなった感じがするんですけど。

藤田:そうかもしれないですね。なんか,帰ってしばらくすんごい悩んで。帰ってきてすぐの制作展も,あんまりいい作品出せなかったなぁとか,思ったりしてたんですけど。

帰国前後の心境について

橋爪:RCAから帰国すれば,大学院も修了して,アーティストとしてどうしていこうっていう,結構センシティブな時期だったと思うんですけど,どういう気持ちでしたか?

金田:もうね。このママでいいんだっていう感じで帰ってきた。

藤田・橋爪:へー!(驚き)

金田:向こうでペインターやってる日本人と凄い仲良くなって,良く遊んだんです。クリスマスの時期に,僕の共同アトリエ見に来る?って誘われて。クリスマスなんて,日本で言うたら正月みたいなもんじゃないですか?でもアトリエ行ったらみんな制作してたんですよ。

藤田・橋爪:へー!(驚き)

金田:で,うわ!僕も頑張らないとこいつらに負けちゃうわって。クリスマスでも絵,描いてる状況を見た時に,もう早く帰ろうと。帰って僕もアトリエ持つねん。アーティスト続けていこうと。向こうの子ら,バイトしながらの活動でも,そんな切羽詰まった感じでもないんですよね。アーティストって自分で名乗ってしまえばアーティストやって感じで。その姿を見たって言うのは,僕にとって大きかったですね。もうアーティストしかしない!みたいな風に思って帰ってきた。

藤田:それ凄い,良いですね。

橋爪:きっと,ネットがある時代と,ネットがない時代の,海外体験のインパクトって全然違いますよね。

金田:違うねー! アート雑誌しか海外の情報がなくて。あとは,交換留学生が毎年京芸に来るんやけど,その子らから,フリーズっていう雑誌を見せてもらって,ダミアン・ハーストって奴が現れた! 凄いんだよこいつらみたいな。サーチ・ギャラリーめちゃくちゃ面白い,みたいな。そういう小さな情報しかないから,ロンドン行った時の衝撃は,まぁ,凄かった。面白かったです。それでいいんやと思いながら帰ってきちゃった。

橋爪:藤田さんはどうですか?

藤田:どうやったかな。私はまず,作品をどうしようっていうのしか頭になかったです。これからどんな作品作ろうっていう。RCAで,テクニシャンとして働いている人と,チューターとして働いている人がいて。あ,テクニシャンになるってのも悪くないなってちょっと思って。そういう選択肢もあるんだなって。自分が,技術をもっと高めていくのか,それとも,作品を作る人になるのか,みたいな。

金田:へー。

藤田:まぁ版画をやってるからでしょうけど。そういうのは思いましたね。でも今は,どっちもやればいいかなって(笑

橋爪:白か黒か決めちゃうとしんどいところもありますよね

金田:刷り師って選択肢もあるかなってことね。なるほどね。

藤田:そういうのもやっていけるんだなぁってのは,思いましたね。あとはそんなに,何も考えてなかったかも(笑)目先のことに精一杯で。

橋爪:全体的に留学はいろんなことを考える機会となったようですね。

金田:僕は交換留学に行くことを学生にいつも勧めるねん。それは,延命措置じゃないけど,アーティスト続けて行きたいって思うよ,向こうに行けばって。

藤田:そうですね。確かに。

金田:帰りニューヨークにもよって,まぁなんだか自由に生きてるやつばっかりにばっかりに会ったんですけど(笑)いろんな人に出会うから,よくわかからない賞もらったりするより絶対留学行くほうが君のためになるよって,学生に説明してますね。

藤田:RCAで同期にサウジアラビア人の女の子がいて,ものすごい優しくって,色々教えてくれる子だったんですけど,最後に「あなたの作品は凄くかっこいいから,絶対にやめないで」って。すごい目力で(笑)言ってくれて。そのことは凄い覚えてて,よく思い出します。その一言で,あっ確かに辞めたらもう終わりだなって(笑)今でもSNSで繋がってる人もいて,活躍してる人も居るので,あぁ,やってるやってる!ってなります。

金田:そうやね。向こうに行って最高によかったことはそういうことかなぁ。続けて行こうって思えたことかな。

藤田:確かに。辞めようとは思わなかったですね。

藤田紗衣
1992 京都府生まれ
2017 京都市立芸術大学 大学院 美術研究科 絵画専攻 版画 修了
2015 ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)短期交換留学
京都市立芸術大学 美術学部 美術科 版画専攻 卒業

金田勝一
1970京都府京都市に生まれる
1994ロイヤル・カレッジ・オブ・アーツ(アニメーション科)交換留学
1995京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了