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2008年度 ブレーメン芸術大学(Hochschule für Künste Bremen)/ 永野伶実

学部
大学院音楽研究科 音楽学部・大学院音楽研究科

年度
2008

氏名/専攻
永野伶実/フルート

プロフィール

プロフィール

京都市立芸術大学音楽学部卒業。同大学院修士課程音楽研究科修了。 在学中、交換留学生としてブレーメン芸術大学で研鑽を積む。
2012 年より再び渡独し、2015 年同大学院修士課程を最優秀を得て修了。 Deutschland-Stipendium 奨学生。 現代音楽と古楽を中心に、モダンと古楽器の奏者として活動中。また、バロック・ フルートの為の現代作品を委嘱し、初演・再演を行う活動を展開している。
Studio N.A.T より 1st アルバム『笛吹き女』(「レコード芸術」「音楽現代」準推薦盤 )、 配信アルバム『笛と声』を発売。 デルメンホルスト現代音楽祭、新・福岡古楽音楽祭等に出演。 大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。

交換留学から辿るキャリアパス2022 特別インタビュー

交換留学経験がその後のキャリアにどのような影響を与えたか、実際の経験談から辿っていくイベント「交換留学から辿るキャリアパス」に先立ち、2022年9月に登壇者の永野さんから留学当時のお話を伺いました。

質問:2022年現在、以前に比べ協定校が増えたにも関わらず、交換留学希望者は減少傾向です。永野さんの在学当時はいかがでしたか?また交換留学に行くことを決めたきっかけなどを教えてください。

永野:私が学部生とか院生の時って、交換留学はとても人気があって、今の状況がちょっと信じられないです。私は経済的に長期留学できるような状況ではなかったので、交換留学で半年行けたらいいな、ぐらいの気持ちで学部の頃過ごしていて、その後大学院に受かったので、すぐに(交換留学に)行きたいです!って申し込みました。学部3年生か、4年生の時に、ブレーメン芸術大学のフルートの教授が、大嶋先生(本学教授)のご自宅にいらっしゃってマスタークラスをしてくださったんですね。その時に、レッスンを受けたことがあって、この先生にもう1回ぜひ習いたいと思い、ブレーメンへの交換留学に応募しました。
あと、私の夫も京芸出身の作曲家なんですけど、私の5年前ぐらいに交換留学でブレーメンに行っていて。当時は留学期間が3ヶ月だったらしいんですが、帰りたくないからと半年に延長して滞在したそうです。彼からよくブレーメンの話を聞いていたので、私も行きたいなとずっと思っていました。

質問:留学期間が昔は短かったんですね。当時は交換留学の人気があったこともあり、先輩からの情報を得ることも多かったですか?

永野:そうですね、私の前まではほとんど作曲科の人が行っていました。

質問:音楽学部って、美術学部に比べて、学部内での情報共有が密な印象がすごくあります。 そこら辺はいかがですか?

永野: オーケストラの授業とか、室内楽でも先輩などとも一緒になるので。そうですね、一学年5〜60人、全員知り合いというような感じです。あと、(専攻している)楽器ごとに部屋があるんで、みんな1日中そこにいるので、そこで毎日先輩といろんな話をしたり。自ずと交流ができます。

質問:当時の学内選考の様子はいかがでしたか?

永野:全選考からまず3人が学内で選ばれて、選ばれた人は音源 をCDにして提出しました。作曲の子は作品(楽譜)も提出します。あとは履歴書を一緒に、その3人分を大学からブレーメンに送ってもらって、あとはもうブレーメンの先生が決めるっていう感じです。

質問:ちなみに当時応募できた留学先って覚えていらっしゃいますか?

永野:当時はブレーメンとウィーン、それとフライブルクでした。

質問:ドイツ語圏の大学のみ3校というのも音楽ならではですね。美術学部にはドイツ語圏の交換留学協定校はないんです。その後選考が終わったあとの準備期間は、どういうことをされましたか?

永野:留学期間1ヶ月前の8月に入ってから(受入れOKの)返事が来て、9月に出発しました。

質問:初めての海外経験でしたか?いきなり渡航が決まって大変じゃありませんでしたか?

永野:マスタークラスを受けに行ったこと1回だけありましたけど、住むのは初めてでした。住む場所に関しては、寮の中に交換留学生用の部屋が常に確保されてるので、そこに入れてもらいました。

質問:家探しの苦労がないのはありがたいですね。寮はどういった感じでしたか?

永野:全部2人部屋です。楽器の練習環境とかは寮にはなく、練習は学校でする感じです。寮内では音が包抜けで、最低限住めるっていう感じで。用意してもらっているので文句は言えないんですけど(笑)私はハンガリー人の子と同居していました。その生活もそれなりに楽しかったです。

質問:学校での登録など、どのような形で始まりましたか?

永野:ブレーメンって、交換留学に結構力を入れていて、当時は留学生1人につき1人、在校生の担当者を用意してくれたんですね。その子たちは、私に1時間付き添ってくれたら、1時間分の時給を学校からもらうという感じです。私はなぜか2人、ドイツの男性と日本人の女性がついてくれて。 最初空港に着いた時も、迎えに来てもらったり、銀行の口座開設もついてきてもらったので、 本当に助かりました。その辺は全然苦労してないです。

質問:いわゆるチューター制度と呼ばれるものですね。ドイツ語のわかる日本人の方に助けてもらったりすると、本当に助かりますよね。

永野 :本当に難しい時だけはついてきてもらいました。ビザの申請とかは、申請部屋の中までは、本人しか入れないので、最後は自分で頑張らないといけないですけど、 めちゃくちゃ助かりました。

質問:ご自身で結構ドイツ語を勉強されてから行かれたんですか?

永野:はい。 でも渡航してから交換学生は語学学校に無料で通わせてもらえたので、そこもよかったです。

質問:そこも含め、現地でのその学びの部分についてですけど、日本での大学生活とどういう違いがあったとか、ここが良かった、イマイチだったという部分を教えてください。

永野:私の先生がオランダ 在住で、2週間に1回しか学校に来れない人だったので、レッスンがいつも個人レッスン1回と、その次の日はグループレッスンで、クラスみんなで受ける形だったんですね。そのグループレッスン時は、演奏を他の学生がたくさん聞いていて、誰かが吹くともう前からポンポンポンポン意見が飛んできて、で、副科でフルートをやってる子にもバシバシ何かを言われて、そこがすごく衝撃でした。日本では、そんなレッスンの光景ってないと思うので。

質問:なるほど、日本ではないんですね、そういうレッスンって。

永野:日本ではそうですね、グループレッスンも少ないと思いますし、レッスン受けてる子を別の学生が見学するっていうのはあると思うんですけど、 そこに先生に被せて何か意見を言うとか。しかも、副科の子が(本科の学生に向かって)何か意見してくるってのはなかなか珍しいんじゃないかと。ま、それが結果的には良かったんですけど。

質問:やっぱり、副科の子だと、違う楽器の専門性を持っているので、違う視点で意見をもらうこともできそうですね。 ずぶずぶと意見を言い合うなか、友情関係はいかがでしたか?

永野:深く付き合うような感じはないんですけど、文化がものすごく違う国の人が色々集まっていることを、当たり前に受け入れてる感じはしました。付き合いやすい感じはあります。あと学生の半分くらいはアジア人で、中国人、韓国人の子とはよく遊んでましたね。

質問:フルート以外に、室内楽を履修されていたそうですが、どんな編成を組んでいましたか?

永野:最初は日本人の学生とフルート2本とピアノの編成で始めたんです。寮が一緒だった子と仲良くなって、せっかくだからアンサンブルを一緒にやろうとなって。その後ちょっとフルート足りない時に声がかかったりとかして、色々吹かせてもらいました。アジア人以外とも。

質問:じゃあ、結構、飛び込んでいこうみたいな気持ちがおありになられたんですね。チャンスがあったら行くぞみたいな。

永野:はい、絶対に断らないと決めて。

質問:室内学のレッスンはどのようなシステムでしたか?

永野:自分で先生に見てくださいって申告して受ける感じです。時間は決まってなくって。自分でホールを抑えて本番を1回をやって、審査は先生が2人か3人、規定の人数以上聞きに来てくれれば、単位になりました。

質問:実技以外に他の授業は受講されましたか?

永野:他はもう取らずに練習していました。あと授業と関係ないんですけど、学生証でハンブルグとハノーファーまでタダで行けるんですよ。なので、できるだけ演奏会に出かける時間を 取ろうと思って、毎日どっちかに行ってました。コンサートも立ち見でなら5ユーロで聞けるので。そっちの方に時間を費やしていました。

質問:印象に残っているコンサートのプログラムはありますか?

永野:ハノーファーで見た現代演出の椿姫が、人生で見た中で1番よかったです。舞台にビオレッタしか出なくて、他の登場人物は客席の奥のところから歌うっていう不思議な演出なんですけど、感動しました。

質問:なかなか簡単に想像できない演出ですね!それ以外にもオペラを見る機会はありましたか?

永野:はい、日本ではほぼ上演されることないだろうって、テレマンのものとか。あと、ワーグナーの日はお客さんの服装が違うのが面白かったり。客席の雰囲気からワーグナーはドイツ人にとって特別なんだろうなって。

質問:オペラのチケット代は、一般と学生料金とでかなり違うんですか?

永野:立ち見だと誰でも5ユーロなんですよ、私、そこしかとったことがないのですが、一般のS席みたいなところは80ユーロとか。

質問:留学の修了時の単位って、京芸側で単位認定ししてもらったと思うんですけど。向こうではどういった試験を受けられましたか?

永野:試験はなかったです。試験がある授業を取っていれば、 何かしらあったと思うんですけど。私、レッスンと室内楽だけだったので、京芸から預かった証明書みたいなプリントに先生にサインだけしてもらいました。

質問:なるほど、ではソロのプログラムで、リサイタルとかはやられてないですか?

永野:そうですね。自分1人ではなくて、友達と企画したコンサートとかはしました。

質問:ほんとうに、交換留学生という特殊な立場で、向こうに在籍したような形ですね。永野さんはその後本科生として再度同校に留学された際、印象は変わりましたか?

永野:言葉が喋れさえすれば、交換留学でも、正規の学生と同じくらい得られるものがあったんだなって、それをもう一度留学した時に痛感しました。

質問:語学の重要性に関してなんですけど、行ってみたらなんとかなるよっていうアドバイスをする人が多いと思うんですけど、実際いかがでしたか?

永野:そうですね。確かに行ったらなんとかはなるとは思うんですけど、日本でやっていくに越したことはないです。得られるものの量が、全然変わってきますし、やっぱり自分の安全とか命を守るっていう意味でも絶対に必要ですね。私は運良く1度もそういうことはなかったですが、周りの人は楽器を取られたり、数えきれないほど話は聞きます。

質問:実際にどんな話があったんですか?

永野:金のフルートを盗まれた子がいて、お店のレジで一瞬置いて、数秒間離れたんですよ。 スリの人ってそういうところ、勘が働くから取られちゃったり、シルバーの楽器取られた子もいますし。

質問:なるほど。高価な楽器を持って留学する皆さんには是非注意をしていただきたいです。最後に、帰国前後のお話しを伺いたいのですが、京芸にもどってきて、意識の変化などありましたか?

永野:私、元々バロックと現代音楽が大好きなんですけど、 その2つがブレーメン芸大ではすごく盛んで、交換留学に行ってその2つを極めようっていう決心ができたというか、これからどうしていきたいかって方向性が そこで決まった気がします。

質問:日本だとやっぱり現代音楽や古楽の演奏をそんなに専門的に学ぶ機会っていうのは、ヨーロッパに比較すると少ないですよね。交換留学には、そういったすごくポジティブな側面もあると思うんですが、逆に、 これ辛かったなみたいな。ネガティブな側面も伺えますか?

永野:交換留学では、自力で留学に長期で行こうっていう人よりも、 準備不足な傾向はありますよね。そのまあ、自己責任ではあるんですけど。語学の面とか。現地に行っても、最初から周りの人が助けてくれるんで、私はそれに感謝はしてるんですけど、そこ頼みになってしまった。やっぱり交換留学だと、期間が半年なり、1年と短いので、その中でより多くのものを学ぼうと思うと、語学をとにかく準備していった方がよかったです。最初はそこを結構後悔しました。語学が準備できていると、レッスンとか音楽的な意味ではもちろんなんですけど、やっぱり友達がすごく増えたので、生活面でも充実しました。

質問:最後に、率直な質問ですが、交換留学に行って、良かったですか?交換留学を希望している学生にもしメッセージがあればお願いします。

永野:もう200パーセント良かったです。ちょっとでも留学に興味があるなら、多少無理してでも絶対に行った方がいいと思います。

聞き手:橋爪皓佐 (芸術資源研究センター非常勤研究員)、ベックマン牧子(インターナショナル・コーディネータ)
編集・制作:京都芸大国際交流アーカイブ(芸術資源研究センター重点研究プロジェクト)

2008年度 ブレーメン芸術大学(Hochschule für Künste Bremen)/ 永野伶実

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