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2017年度 国立高等美術学校(ENSBA)/フランス 砥綿 栞

学部
大学院美術研究科 美術学部・大学院美術研究科

年度
2017

氏名/専攻
砥綿 栞/芸術学

プロフィール

学年 修士課程1回生
留学先 国立高等美術学校(École nationale supérieure des Beaux-Arts)
留学先専攻 パフォーマンス(ダンス)
留学期間 2017年8月28日~2018年1月10日

留学行動記録

8月28日日本出国
8月28日パリ到着/ゲストハウスに滞在
8月29日学生寮の入居手続き
8月30日〜31日 ゲストハウスに滞在しながら生活用品などの買い出し
9月1日寮に入居開始
9月7日〜9日 ドイツ・カッセルに友人と旅行
9月10日〜17日 在留届提出,携帯電話購入,舞踏ワークショップへの参加など
9月18日〜22日 学校のオリエンテーション期間(授業登録〆切は10月23日)
9月25日〜29日 フランス語,Morphologie(人体デッサン)など一部の授業開始
10月5日Studio UCのEmmanuelle HUYNH教授と面接
●毎週火・水がフランス語の授業/火・木が人体デッサンの授業/Studio UCの授業は月に4日〜7日程度
10月23日授業登録〆切
10月30日Xylographie(木版画)の授業開始
●毎週月曜日にレクチャー,作品プランチェック。それ以外は版画のatelierで作業
11月13日フランス人の舞踏研究者と会う
11月18日〜20日 イタリア・ベネチアに友人と旅行
11月21日〜12月2日 Certificate(交換留学プログラムの修了証明書)について学校に相談,学生寮の退居時のアポイントメントなど
12月6日Emmanuelle HUYNH教授に舞踏家との制作などについてインタビュー
12月9日〜10日 Studio UCの授業でOrléanに1泊2日のワークショップに行く
12月13日フランス語の授業内でテスト,Certificate発行のための書類を提出
12月18日〜22日 学校でDiplôme(卒業制作)の展覧会期間
12月23日Christmas Holiday(学校休暇期間)開始〜1月7日
12月24日〜12月27日   スイス・ジュネーブに旅行
12月28日〜1月7日 パリ在住の舞踏家へのインタビュー,荷物の郵送準備など
1月8日授業再開
1月9日学生寮を引き払う,学校で修了証明書を受け取る
交換留学生展の搬入&オープニングパーティー
1月10日パリ出発
1月11日日本帰国

渡航〜オリエンテーションまで

 8月から9月にかけては,私は生活環境を整えることを優先に行動していました。8月28日にパリに到着し,翌日すぐに入寮手続きを済ませ,食器など必要なものを買い揃えました。その後1週間ほど経って同じパリのENSADに留学していた友人とドイツ・カンセルのドクメンタ(5年ごとに開催される世界規模の現代美術展覧会)を見に行く,パリでダンスの公演を見に行くなどしていました。9月18日からオリエンテーションが始まり,また初めての一人暮らしに慣れることに時間がかかっていたためあまり旅行は多くは行きませんでしたが,今から考えるともう少し9月中に色々な所に行っていてもよかったかもしれません。

授業や制作について

 国立高等美術学校では,交換留学生はStudio UCという主に自主制作を行う授業を一つ,Technical UCという素描や工芸など技術の習得を重視する授業を二つ,そしてフランス語の授業を受けることになっています。曜日や時間などはそれぞれの授業によって違うため,9月から10月にかけて自分のスケジュールを組み立てながら興味のある授業を選択しました。

 私にとって特に印象深かったのがStudio UCとして取ったダンス・パフォーマンスの授業です。私は日本では芸術学専攻に所属してダンスの研究をしているのですが,留学先では制作を主に行っている他の学生に混ざって,ワークショップのように実際に体を動かしてみる授業を受けていました。その中で扱われているのは主に欧米で考えられたコンテンポラリー・ダンスであり私が研究している種類のダンスとは違うものでした。しかし,実際に授業の中で先生が動きについて説明する言葉や体の動かし方に触れていると,私が研究しているダンスと共通する部分もあり,今後日本で研究のテーマを練り直していく際にヒントになりそうな点が多く見つけられたのは,大きな成果だったと思います。

 その他,Technical UCとして取ったMorphologie(人体デッサン)やXylographie(木版画)の授業も,それぞれ私にとってはほぼ学部一回生の時以来の制作の経験でした。人体デッサンは週二回決まった時間に行われ,木版画では先生が週二,三回アトリエに来て学生の作品プランや技術について指導をする,という形でした。版画の機材に関しては,先生やmoniteurと呼ばれる担当の学生がいる時でないと扱えないものもあったため,最初は他の学生などに制作場所のルールや使い方を確認することが必要でした。自分の研究に直結するわけではありませんが,現地の学生がどのようなものに興味を持ち,どのような作品を作っているかということについて知ったり,フランスの美術学校ではどのようなことを重視して技術が教えられているのか,ということを知る機会になりました。約3か月の授業期間の中で学生や先生と英語,フランス語でコミュニケーションを取ることもできたので,またパリに行くことがあった場合も会いに行くことができるという感覚があります。それは旅行や大学に属さない滞在とは大きく異なる点ではないでしょうか。

現地での生活・語学について

 パリでの生活で思い知ったことは,そこでは色々なことが「人による」「時間がかかる」ということです。授業の登録に関しても,先生によって「他の学生を多く持っていて制作場所も少ないため交換留学生は受け入れない」「制作プランが固まっている学生以外受け入れない」という人もいれば「交換留学生として短期間受け入れるのは全く問題ない,初心者でも問題ない」という人もいます。また,日常的な話としては美術館に行った時に美術学校の学生だということを言えば常設展だけでなく企画展が無料になることもありますが,それを認めるかどうかも受付の職員によって違うことがあります。学校では蚤の市で有名なClignancourtにあるアトリエに交換留学生全員で見学に行く日も予定されていたのですが,その日付が一週間ほど延期されたので留学生たちは自分で先生に会いに行った,ということもありました。学校や学生寮の事務所に用事があって行っても,急に休業していたり担当者が席を外していたりすることも多いです。公的な機関の動きが日本よりもかなり不規則でゆっくりとしているため,手続きなどは時間がかかると思っておいたほうがいいでしょう。

 語学に関しては,私は留学前に一年間京都のアンスティチュ・フランセ関西で講座を受けていたこともあり現地ではボザールの授業以外に特別な語学の勉強はしませんでした。授業は基本的にフランス語で行われるため全てを理解することは難しいですが,自分の特に知りたいことは他の学生に後から聞いたりすれば,思っていた以上に親切に教えてもらえます。フランス語の授業の先生は銀行口座や学生寮に関する書類についてなど,学生から寄せられる日常生活のフランス語に関する相談にも答えてくれました。

留学を終えての感想

 まず交換留学に行きたいと思った時点から,私には他の学生のように美術作品を作る習慣がない,しかし理論の専攻に入れるほどの語学力もないというハンデがありました。学校の中での授業は研究に直結しないということもあり,滞在中は常に「自分が今すべきことは何だろう?」と悩んでいたと思います。しかし,特に11月,12月頃から私の研究に関わりのあるパリで活動する日本人ダンサーや,フランス人研究者や批評家,そしてStudioUCの担当であるダンサー・振付家のEmmanuelle HUYNH先生にアポを取って話を聞きに行くことを積極的に始めてからは留学の手応えを感じ始めました。美術学校の中で体を動かしながら現地のパフォーマンスやダンスについて知ること,そして学校の外で色々な人に会って話を聞くという両方のことをすることで,自分の中で日本での研究と現地での経験を少しでも繋げることができたと感じています。

2017年度 国立高等美術学校(ENSBA)/フランス 砥綿 栞

学部
大学院美術研究科 美術学部・大学院美術研究科

年度
2017

氏名/専攻
砥綿 栞/芸術学

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