2018年度 中国中央美術学院(cafa)/中国 山田 真実
学部
大学院美術研究科
美術学部・大学院美術研究科
年度
2018
氏名/専攻
山田 真実/版画
プロフィール
学年 修士課程1回生
留学先 中央美術学院(cafa)
留学先専攻 中国版画
留学期間 2018年9月~2019年1月
留学行動記録
8月25日 | 日本出国/中国、杭州に到着 |
8月28日 | 上海に到着 |
8月31日 | 北京到着・大学訪問・中央美術学院にて交換留学生の受付/ホテルに滞在 |
9月1日 | アパートに移動 |
9月3日 | 留学生オリエンテーション |
9月4日 | 版画専攻での授業初日(朝8時から研究室全員集合でミーティング) |
9月4日~ | 【中国伝統木版画の実制作[线刻技法]】の授業 |
9月19日 | 【研究生综合测评汇报】版画専攻院生の昨年度の制作報告会のようなもの |
10月1日~7日 | 国慶節(祝日)のため休み |
10月8日~ | 【中国伝統木版画の実制作[饾版技法]】の授業 |
10月24日~ | 木版画工房『荣宝斋』見学 |
10月26日 | 運動会 |
11月26日~ | 【中国伝統木版画の実制作[年画]】の授業 |
12月16日 | 年画工房『武強』見学 |
1月8・9日 | 展覧会搬入 |
1月10~18日 | 本科生期末作品展 |
1月15日 | アパートを引き払う/北京出発/日本帰国 |
授業や制作について
版画系第一工作室は、中国の伝統的版画について、基本的技巧の把握と歴史・芸術的観念について研究している研究室です。私は学部3回生の実技の授業に加わっています。教室では、各自個人スペースがあり、作業机が割り当てられています。学生は学内の寮に暮らしているので、制作室は24時間使用可能です。
授業では基礎をひと通り学んだ後、先生や他の生徒と対話しながらより良い方法を探っていきます。材料の調達から刷りの工夫まで学生間で情報交換しながら制作をすすめるのは、新しいアイディアや問題点を自分たちで発見するためです。基礎の動作、刃の砥ぎ具合や彫刻刀のもち方については細かくチェックされます。 先生は生徒個人の考えや技量に合わせて課題を出されるので、基礎の授業であっても、創作物は人によって異なります。「生徒個人の考え」とは、ディスカッションの意見以外に、個人の好みもあり、こちらの学生はどんな意見も言葉に出してはっきり言い切る場面が多いと感じます。
私は課題として模刻の図を2枚提案されました。2枚とも技術面では比較的簡単ですが、彫りの前にいくらかの補修が必要で、資料の収集方法を工夫しなければならず、単に原案の通りに模刻すればいいというものではありませんでした。資料の収集のため国家図書館へ足を運びました。 課題の終了時に『制作物』と共に『制作過程の画稿、創案、問題点をまとめた書面(図・写真、挿入可)』の提出がありました。創作過程での計画、実験、議論、調査研究、視覚的な反映、また資料を残してまとめる作業も重要視されます。ポートフォリオを含め、提出物は全て中国語に訳しておくことがマナーとされています。 1月10~18日にかけて、普段は学部生が制作室としている教室で開催された《本科生期末作品展》に参加しました。この期間は“教学开放 [開放]周”となっており、各専攻の学部生が作品発表を行います。先生方が学生の作品の評価採点をするためにまわる時間以外は展覧会として開放されており、外部の方などが自由に観覧にきます。少し京芸の制作展に雰囲気が似ています。
現地での生活・語学について
最初のうちは生活用水が体に合わず、飲料水でうがいをしたりしていました。また、北京の気候は京都よりもかなり乾燥しています。秋の間はまだ大気汚染の心配はなく、マスクをしている方もいません。 物価は、同様の物でも品質によっておおきく違います。日本のもの(画材、生活消耗品など)も売っていますが割高です。一般的に、食費は日本よりも安く、家賃は高めです。こちらでは生活習慣・考え方の違いから予測しないことに度々遭遇します。しかし、中国の方は情が厚く、お節介を焼いてくれるので、人と人との距離が近く、助け合いが常になっている場面におおく接します。何か問題事があった場合、周りの人に声をかけたり友人に助けを求めるのが一番早いです。近しい人に「謝謝(シェイシェイ)」 を多用すると嫌がられます。友人なんだから当たり前(だから、わざわざ言葉にしないで)という考え方のようです。
学期が進むにつれて、同じゼミの生徒だけでなく、他学年他専攻の方や近所の人に声をかけられても緊張せずにおしゃべり出来る心の余裕がもてるようになってきました。中国の人たちはちょっと中国語が喋れるととても褒めてくれるので、もっと勉強しようと元気がでます。 中秋節(旧暦8月15日)、重陽節(旧暦9月9日)、国慶節(新暦の10月1日)、冬至などこちらではいろいろな祝日にあわせて授業が休みになったり、異なった食べ物を食べる習慣があります。学生は皆、寮暮らしの大学なので、お互いの生活が密接に関わりあっていて、こういったイベントも同級生や先生たちと経験しました。同級生の出身地が中国各地にまたがっているので、北方と南方の習慣の違いやバラエティーなど興味深いことばかりです。
留学を終えての感想
北京には多様性や、階層を飲み込んでいくようなエネルギーを感じました。意思次第でいろんなことに挑戦できる土地だと思います。また、これまで制作において自分1人で考えていたことが、複数人と考えることで物事を進める速度が何倍にも加速していくんだなあ、と、グループワーク中心の授業で実感しました。個人の性格やバックグラウンドが異なる土地でのグループワークを、今後の選択肢と行動の幅が広がるきっかけとしてつなげていきたいと考えています。
課題で忙しい日々、語学での失敗や習慣の違いに戸惑い落ち込む度、中国の友人達の明るさやおおらかさにはいつも救われました。人と関わることに対して長く苦手意識がありましたが、右も左も分からない土地ではそうは言っていられない状況で、その考え方を変えざるを得ませんでした。中国の方々は友人に対して親身で、人と関わることにとてもオープンです。この留学生活では自分ひとりの無力さを痛感するとともに、だれかと持ちつ持たれつの関係を築くことに前向きになれ、人からのおせっかいを嬉しいと感じました。私の気持ちをおおきく緩めるようなこの出来事はこれからの考え方をかえるきっかけになると思います。