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2019年度 ロイヤル・カレッジ・オブ・アート/イギリス 澤崎 賢一

学部
大学院美術研究科 美術学部・大学院美術研究科

年度
2019

氏名/専攻
澤崎賢一/構想設計

プロフィール

学年 博士課程2回生
留学先 ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art)/イギリス
留学先専攻 The School of Arts & Humanities
留学期間 2015年9月~12月

留学行動記録

9月20日 日本出国
9月23日ロンドン到着/アパート(北園ハウス)に移動
9月25日オリエンテーション/学生カードなどを受け取る
9月30日機材利用のワークショップに参加
10月8日〜授業スタート              毎週火曜日がリサーチグループワーク/その他は主に博士棟で制作
10月8日博士課程の学生たちのウェルカムパーティ
10月17日 スーパーバイザーとのミーティング(1回目)
10月29日   RCAで企画Spot on Asia Curators’ Talk (Japan & Taiwan)を拝聴
11月1日知人の案内でTate Galleryの倉庫を鑑賞
11月16日ターナー賞の入選作品を鑑賞
11月20日 スーパーバイザーとのミーティング(2回目)
11月24日   White Cube Galleryでアンゼルム・キーファーの展覧会を鑑賞
11月内で数日自分の研究と関連するギャラリーを訪問
12月9日交換留学展を鑑賞
12月10日フェアウェル・パーティ
12月12日スーパーバイザーとのミーティング(3回目)
12月15日アパートを引き払う
12月16日ロンドン出発/17日日本帰国

授業や制作について

 ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)のSchool of Arts & Humanities分野の博士課程(PhD)では、2019年度は4つのリサーチグループがありました。それぞれ「ARCHIVE」「PUBLIC」「ENTANGLEMENT」「CORRESPONDENCE」と名付けられていました。私はOlivier Richon教授が主催する「ARCHIVE」とJohnny Golding教授が主催する「ENTANGLEMENT」に参加しました。リサーチグループのワークは、毎週1回火曜日に開催されました。「ARCHIVE」は、その名の通り「アーカイブ」です。難しいのは、「ENTANGLEMENT」でしょうか。「もつれる」「絡み合う」といった意味で、「Quantum Entanglement」=「量子もつれ」といった使われ方をする、少し難しい単語です。参加者は、それぞれ15人前後です。

 博士課程の学生は、BatterseaエリアにあるRansome’s Dockと呼ばれる博士課程専門の建物に机ひとつ程度のスペースをもらうことができます。注意点は、事前に自分でスペースが欲しいとはっきり伝えておかないと、スペースはたぶん貰えません。私は、ここのスペースにおおむね毎日通い、映像編集と論文の執筆を行いました。24時間開いているので、とても便利です。

 グループワークの一部を紹介すると、ARCHIVEグループでは、アメリカの黒人差別を題材にしたKara Walkerの展覧会やジャック・タチ監督の映画『ぼくの伯父さん』を鑑賞しながら、アーカイブについて多角的な視点から議論しました。ENTANGLEMENTグループでは、ヘーゲルの弁証法から全体主義やナチスに至る議論やThomas Nail『LucretiusI: An Ontology of Motion』を読むグループワークを行いました。ENTANGLEMENTグループは哲学的な内容で、かなり高度な語学力が必要でした。

 リサーチグループへの参加は、中盤~終了時期にかけて、博士論文の執筆と映像編集に時間を費やすために、「ENTANGLEMENT」グループのみに絞ることにしました。「ENTANGLEMENT」では、引き続き、Thomas Nail『LucretiusI』やそこから展開してSean Carroll『Something Deeply Hidden』などが取り上げられました。しかし後半の授業は、私の英語の語学力が至らず、残念ながらあまり理解が追いつきませんでした。関連して登場した思想家は、ジャック・デリダ、ミシェル・フーコー、ジャン・フランソワ・リオタール、カトリーヌ・マラブー、ジル・ドゥルーズらでした。「ENTANGLEMENT」グループの素晴らしいところは、ある概念について、すでに思想家が答えを出しているようなものについても、グループの中でその概念がかたち作られる手前において、自分の力で考えることを重視していること。この作業は時に思いもよらない発想に結びつくこともあり、刺激的でした。同時に、プラクティス・ベースの研究者の場合、抽象度の高い議論が実制作に結びつけにくいという側面もありました。Johnny Golding教授のパフォーマティブな議論がとても魅力です。また、グーグルドライブ上で共有されている「The Reading Room」には、これまでグループワークで読まれた文献がアーカイブされていて有益です。

 リサーチグループとは別に、PhDの交換留学生には1名のスーパーバイザーと研究/制作について話をする機会が与えられます。私のスーパーバイザーは、Melanie Jacksonというアーティストでした。スーパーバイザーは、こちらからは希望することができず、Arts & HumanitiesのSenior TutorであるRebecca Fortnum教授が提出された資料をもとに各学生のスーパーバイザーを決めていました。交換留学生は、3ヶ月の滞在期間に合計3回の面談が可能です。1回目の面談では、かなり時間をかけて研究/制作について助言をいただき、有益な時間となりました。また、研究と関連するロンドンにある具体的なギャラリー情報や参考作家などを助言いただき、それらの情報をもとに実際にロンドンのギャラリーを巡ったりもしました。

 後半のスーパーバイザー(Melanie Jackson)との面談も、とても有意義なものになりました。RCAのスーパーバイザーとの面談は、各回ログを残して共有するためのSupervision Recordというものがありました。前回の面談からどのような発展があったか、今回の面談ではどのような議論を行ったかなどを記録に残していきます。なお、RCAの正規の博士課程の場合、各学生のスーパーバイザーは2~3名で、年間6回にわたる面談があるそうです。

現地での生活について

 ロンドンに住んでいる友人の紹介で、日本人の北園さんがオーナーである北園ハウス(Kitazono House)という日本人のみが暮らす住居に住んでいました。偶然ですが、修士課程の学生おふたりも同じ住居でした。他に住んでいる方々と特別な交流はありませんが、淡々と暮らしていました。博士棟(Ransome’s Dock)のあるBatterseaまで電車とバスを乗り継いで1時間弱と少し遠いですが、オーナーが日本人なので、部屋が空いていればすぐに入れます。現地での生活について、私の場合は、昔イギリスに1年ほど住んでいたので、当時の友人たちを介して交流する人脈を広げていきました。博士課程の他の学生らとの交流は、フェアウェル・パーティが2度ありました。あとは、大学に毎日通っているうちに偶然出会った人たちと雑談するような感じでした。

語学について

 私の場合、語学を伸ばす実践は、現地に着いてから、リサーチグループのあいだの集中した聞き取りと、簡単な事前の読書と事後の確認でした。ですが、あまり語学学習に時間を費やす余裕はなく、自分の研究に専念していました。一番語学の学習になったのは、自分自身の研究内容を英訳して準備した上でスーパーバイザーらと議論することでした。いずれにしろ、博士課程の場合、渡航前にすでに一定以上の語学力がなければ、ついていくのが大変だと思います。

留学を終えての感想

 まとまった期間、外国で生活をする機会は多くはないので、時間をかけて新しい人間関係が築けたように思います。また、英語力も少しはまともになってきて、英語での文献調査にもそれほど抵抗なく臨むことができるようになったことは良かったです。「ENTANGLEMENT」の授業では、昨今の英国での関心の中心に触れることができ、スーパーバイザーとのミーティングでは、自分自身の研究をヨーロッパを中心とした視点から相対化できました。

2019年度 ロイヤル・カレッジ・オブ・アート/イギリス 澤崎 賢一

学部
大学院美術研究科 美術学部・大学院美術研究科

年度
2019

氏名/専攻
澤崎賢一/構想設計

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