2023年度 ウィーン国立音楽大学/オーストリア 稲山 莉乃碧
学部
音楽学部
音楽学部・大学院音楽研究科
年度
2023
氏名/専攻
稲山 莉乃碧/ピアノ専攻
プロフィール
学年 学部3回生
留学先 ウィーン国立音楽大学
留学先専攻 Piano
留学期間 2023年9月~2024年2月
留学行動記録
9月29日 | 日本出国 |
9月30日 | ウィーン到着/ホテルに滞在 |
10月2日 | 大学キャンパスツアー/寮に住み始める/市役所へ住民登録提出 |
10月7日 | 授業スタート |
10月9日 | 室内楽オーディション(任意) |
10月17日 | ウエルカムパーティー |
11月25日 | クラスコンサート① |
12月20日~1月7日 | 冬休み/旅行(チェコ・プラハ、ハンガリー・ブダペスト、スロバキア・ブラチスラバ、オーストリア・ザルツブルク) |
1月27日 | クラスコンサート② |
1月31日 | 寮退去 |
2月2日 | 日本帰国 |
授業や制作について
私は、ピアノのレッスン、室内楽、音楽鑑賞、ピアノ教育法、ドイツ語の授業を履修していました。全てドイツ語で行われるため、理解出来なかった部分もありましたが、レッスン等は録音して後で分からなかった単語を調べながら聞き返すようにしていました。交換留学生という配慮もあり、個人で行われるレッスンは英語を使ってくれる場合も多かったです。 室内楽は、入学して1週間にオーディションを受けて、先生決めという流れでした。ピアノのレッスンは先生によって始まる日にちがあやふやなので、確認を取るか門下生の誰かと仲良くなるのがいいかもしれません。私の場合、レッスン場所が本キャンパスではなく別のキャンパスで最初その意味が全く分からなく迷いました。ウィーンの授業は即興でアンサンブルを行ったり、ディスカッションをして自分の意見を述べたりと自発性が求められると感じました。
授業内容は、交換留学期間後半に進むにつれ専門性が高まり難しくなりました。ただ、最初の頃よりドイツ語には耳が慣れてきたことが変化した点でした。また、友達もだいぶ増えたのもあり友達の演奏を聞きに行くという時間が最初の頃より増えました。また日本ではあまり友達同士で弾き合いをすることはあまりないと思いますが、ウィーンでは積極的に行われてるように思いました。また、冬休みが3週間弱あったので、ウィーンの近郊の国へ旅行へ行ってきました。プラハ.ブダペスト、スロバキアなど行き、こんなにも近いのに言語や通貨が頻繁に変わることや、地域の人柄も全く異なることも感じて、興味深かったです。
11月末と1月末に演奏会がありました。やはり会場、ピアノ、雰囲気が日本とウィーンでは本当に違って、日本の演奏会は敷居が高いと言われるように、静まった雰囲気で行われるような印象ですが、こちらは本当に友達と喋ってるような雰囲気のまま演奏会が行われているように感じました。それが私にとっては気が休まって楽しくてとても良い雰囲気だと感じました。
大学の手続き等に関しての注意点
授業の登録が非常に苦労しました。本応募の際に行った仮登録はほぼ意味がないようで、まずstudent centerへ必要書類を提出し、自治会費を振込み(私はその頃wiseの存在を知らず、オーストリアの銀行口座も持っていなかったため大変苦労しました。口座がない場合はbank99という郵便局に行くと、12ユーロの手数料は取られますが、振り込むことが出来ます。)、2、3日後に反映されるので、そこからオンラインの授業登録でした。ただ、この期間が初めて学校に行った日から5日間しか無かったため焦りました。wiseの登録など日本で出来るものはしておけば良かったです。私はオーストリアののSiMを使って携帯電話を使用していたため、日本の電話番号が使えず、あらゆる場面で認証コードが必要で代わりに家族にしてもらうことになってしまいました。
住まいの見つけ方について
派遣決定前から「studentenheim」と検索をかけており、練習室がある寮を探し候補をいくつか用意していたところ、ウィーン国立音楽大学から合格のメールをいただいたので、その日に寮に申し込みのメールをしました。しかし、メールの返信がなかなか来ず、何件も催促のメールをしなければなりませんでした。
現地での生活について
私は大学にも徒歩でいける便利なところに住んでいますが、semester ticket(定期のようなもの)は買うべきです。これはトラム、バス、地下鉄全てウィーン市内であれば乗り放題というものです。ウィーンでは、交通機関を使用する機会が多いので必須でした。ちなみに、semester ticketはkarsplatz駅で購入する(その場合学校に在籍している証明、住民登録表などが必要)か、オンライン(wien mobileというアプリ)で購入することができます。改札はなく、切符を買う場合は、時刻を印字します。 歩道を歩く際は、自転車用道路があり、そこを間違えて歩いてしまうと轢かれそうになるので注意が必要です。日本よりキャッシュレス化が普及している印象がありますが、自治会費とドイツ語授業受講代、クリスマスマーケットは現金のみなので注意です。スーパーマーケットはspar限定品、hoffer、ridl、billaのセール品が安いので助かっています。街の中心部は高級ブランド品のお店かお土産屋さんばかりなので、買い物をする時はdonau zentralかマリファナー通りに行っています。
ウィーンは1区、2区という形体になっているのですが、10区は治安が悪いです。またウィーン中央駅(Hauptbahnhof)も夜は危ないかもしれません。私は1区に住んでいますが、都会ということもあり、なんの問題もなく過ごせています。ただ、ストライキはしょっちゅう起きるので、度々トラムや地下鉄は止まります。またホームレスもどこにでもいるのが少し驚きました。こちらでは意外とアジア人が少なく、日本人っていうだけで「こんにちは」と声をかけられたりしますが、強引にチケットを売りつけてこられることもあるので、安易に日本語に親近感を覚えてはいけないと思いました。
特に大晦日はウィーンの治安がとても悪かったです。中心部に住んでいることもありますが、お酒やたばこがそこら中に落ちていたりと危ないので、どこに行く時にも何も知らない旅行者、の雰囲気も出さないように心がけていました。
語学について
私は正直ドイツ語の能力が全く足りていませんでした。この学校は入学にB1(※ゲーテ・インスティチュートのドイツ語検定試験のレベル)が必須条件ですが、交換留学生は語学の証明がいりません。また、周囲も、「ドイツ語喋れないなら英語で話してあげるね」と英語で説明してくれたりしましたが、私は英語も堪能ではないので苦労しました。私が実践していた勉強法は、友達とお出かけする日が来る前に、話が盛り上がりそうな質問を数十個フレーズを暗記し、1人で会話を想定して、鏡に向かって話すというものです。言い回しや単語が分からない時はGoogle翻訳を頼りに、言い回しをノートにメモして暗記していました。これは友達とのお出かけ以外に、ピアノのレッスンや室内楽の合わせ時など状況に応じて、言い回しをあらかじめ覚えて使えるので、自分には1番近道でした。あとは、自分の心の中に浮かんだ独り言のようなものをドイツ語だったらなんて言うんだろう…?とGoogle翻訳をして、新しい表現をインプットしていっていました。また、英語で1本の映画の紹介を1人で行ってみたり、私は人と喋るより、自分で想定して1人で喋る方が傷つくことが少ない上、正しい表現もすぐ確認出来るので良いかなと思っていました。そうしていくうちに、だんだん英語ではコミュニケーションがだいぶ取れるようになりました。
学校で行われるドイツ語の授業では、英語で説明なので戸惑いましたが、電子辞書を駆使して必死についていっていました。
日本で準備しておけばよかったこと、持っていけばよかったもの、済ませておけばよかった手続きなどあれば教えてください
クレジットカードの1段階認証、wiseの登録、病院にお世話になるならECカードの登録、あまり有名じゃない楽譜の準備(モーツァルトやベートーヴェンなどは学校の図書館にありますが、例えば著作権がまだ切れておらずimslpにも載っていないような曲を弾こうと考える場合はその楽譜を日本から持参する)、譜めくりペダル(自分はiPadで電子楽譜にして使ってるので、伴奏の際持ってきておいたら良かったなと思いました)。
その他の今後の派遣留学生へ伝えたい注意事項など
私はウィーン国立音楽大学で習いたい先生がいたため、教授が来日していた際マスタークラスを受けてコンタクトを取っていました。そのおかげでウィーンに知り合いがいない中でもたくさん親切にしていただき不安も少し軽減しました。実際に行って先生と合わない…となると少し残念に思うので、コンタクトはとれるなら取っておいたほうが後々役に立つかもしれません。言語は全然実力不足でしたが「自分がコミュニケーションお化けだ」と唱え、積極的に話しかけにいきました。次第に間違えたドイツ語や英語を使っていても意思疎通できることが嬉しくなり、各国からきているたくさんの友達ができたのでとっても楽しい4か月になりました。
留学を終えての感想
ウィーンで過ごした4か月間は私の人生の中で一番充実しており、また幸せな日々でした。
言語も全然で知り合いもおらず、京芸からウィーン国立音大に行かれた方が最近いなかったこともあり最初は不安とわからないことの連続でした。ただ覚悟だけを持ってウィーンへ行ったものの最初の1週間は交通機関の乗り方も履修登録の仕方も全く分からず途方に暮れていました。そのうえ、同じ交換留学できた友達はほぼ全員がヨーロッパ人でかつ英語が堪能で、私が空気を読んで笑い、うなずくことしか出来ませんでした。このままではだめだと思い、学校で日本人らしい方がいたら全員に話しかけるようにし、そこから数人の知り合いができました。ですが最初の授業はもちろん全部ドイツ語なので正直5%わかるかくらいでした。そこで考えを変え、とりあえず出席しているだけでえらい!とすべてをポジティブに捉え、友達とは英語の実力不足でコミュニケーションが取れなかったのでリアクションを大きくするようにし、最初の挨拶は全力の笑顔を心掛けました。1か月もたつとだんだん英語もドイツ語も耳がなじんできて少し海外の生活にも慣れてきたように感じ、初めて友達とカフェに行き、時々翻訳機に頼りながらもなんとか自分の言葉で伝えようと試みました。次第にコンサート一緒に行かない?など誘われるようになり、同時に日本人の友達もたくさんできてきました。2か月目になるとクリスマスマーケットが始まり、気付いた頃には毎回別の友達と合計7回クリスマスマーケットに行きました。また、日本にいるときはバイト漬けの日々を送っていたこともありウィーンでは時間を気にせず好きなだけピアノを弾けることが私の毎日の小さな幸せだったように思います。またウィーンは物価が高いので、食事は毎日自炊をしてお弁当も時々持参していました、ですが色々疲れてパンだけを一週間食べていた時期もあります。気が付けば初の本番も終わっており、次第に伴奏をする機会にも恵まれました。しかし日本とは違い、伴奏や合わせの際に自分の伝えたいことが言語化できなくてもどかしい気持ちを抱えたのは初めてでした。また相手のレッスンを一緒に受けたり、マスタークラスの伴奏をしたときには私が小節番号が聞き取れないとレッスンがスムーズに行えないので、事前にドイツ語の数字の読み方を何度も確認したこともありました。ただ言語が分からなくても見本で先生が演奏してくださると伝えたいことが一瞬で分かるので、やっぱり音楽は世界共通なんだなと実感しました。一緒に演奏した子は私と同じ歳の同じアジア出身で、短期間だったけど私にとってかけがえのない大切な友達になりました。今も連絡を取り合っています。
冬休みはウィーンにも慣れていたので思い切って一人海外旅をしました。ヨーロッパは国をまたぐのにも関わらず、安い交通費で行けるので3か国訪れました。3時間や4時間の距離なのにすぐ言語が変わり、通貨も変わるので とても新鮮な気持ちでした。そして自分自身とても強くなれたように感じました。また、同じ学校の日本人メンバーでクリスマスパーティーをしたり、友達と大晦日の花火を見に行ったり充実の冬休みを過ごせました。ラスト一か月は本当に寂しくて別れがつらく感じていました。最後はお世話になった方全員にお礼を言おうと思い、たくさんメッセージを書きました。最後にイギリスの友達と学校のベンチで将来のことを語り合ったのも良い思い出です。この4か月は日本では考えられないほど多くの方と出会えて、仲良くしてもらい、たくさんの愛を受けました。そして本場の音楽は自分の想像以上に楽しいもので、日常の一つになっており、音楽を愛している人が世界にはたくさんいることも実感しました。本当に貴重な経験をさせてもらえた京芸の交換留学制度に感謝いたします。