2024年度 国立高等美術学校/フランス 神林 優美
学部
大学院美術研究科
年度
2024
氏名/専攻
神林 優美/美術専攻(構想設計)
プロフィール
学年 大学院美術研究科 修士課程2回生
留学先 国立高等美術学校(École nationale supérieure des beaux-arts)/フランス
留学期間 2024年9月~2025年1月
留学行動記録
8月28日 | 日本出発 |
8月29日 | パリ到着、アパートの大家さんと合流 |
9月2日 | 大学初日オリエンテーション、フランス語テスト |
9月3~6日 | フランス語集中講座 (10:00-12:30) |
9月10日 | アトリエの所属について、教授との面談に関するインフォメーションが公開 |
9月11日 | Saint-Ouen campus見学 |
9月12~14日 | 旅行(アムステルダム、ブリュッセル) |
9月25日 | Cloude Closky氏、Isabelle Cornaro氏と面談 |
9月26日 | Closkyから採用の連絡をもらい、所属アトリエが決定。 |
9月30日 | 授業スタート |
10月1日 | サウンドテクニカルクラスの教授と面談。受講決定。 |
10月14~17日 | サウンドの授業内ワークショップ |
12月9日 | キュレーションを担当したスタジオの展示 |
12月19~22日 | 旅行(ベルリン) |
12月21日~1月6日 | 冬休み |
1月7~17日 | 評価期間(登録していたクラスや所属スタジオの教授に会い、評価シートにサインをもらう) |
1月17日 | 交換留学生展 |
1月20日 | 日本帰国 |
授業や制作について
ENSBAでは、秋学期が始まる前に、登録したいクラスやアトリエを決め、担当の教授と面談する必要がありました。そのため、教授との面談に関するインフォメーションが公開 されると、入りたいアトリエの教授にメールを送り、面談のアポを取りました。第一希望のアトリエに入 れる保証がないため、複数人の教授とのアポをとる必要があります。各教授から指定された期 日までにポートフォリオをメールで送り、数日後に日程の連絡がきました。面談は1人10分から15 分ほど。限られた時間なので話したいことをまとめていく必要があります。私はClaude Closky のアトリエが第一希望だったので最初にアポを取り、面談の後、Claude Closky のアトリエに所属することができました。
基本的な授業のスケジュールはこのような感じでした。
月・木 11:00-12:30 受講必須のフランス語
月 11:00-18:00 所属アトリエのミーティング・合評
火 14:00-17:00 サウンド
金 9:30-12:30 ドローイング
私の所属アトリエでは、毎週月曜日に展示があり、各回、学生一人がキュレーターの役割を担い、展示のテーマ設定やインストールの検討を行うのですが。最初は16人いた生徒も、後半では約半分に減りました。みんな毎週作品を作らないといけない若干の焦りみたいなものを抱えながら週末に集まって搬入していましたが、月曜のディスカッション後には今回も踏ん張って参加してよかったと思えるようなフィードバックがもらえて、また次の月曜に向けて頑張れる、といったルーティーンでした。 12月中旬に、私がキュレーションする展示がありました。「The lie fall straight into the hole.」というタイトルを付け、“嘘” をテーマにしたキュレーションを行いました。展示前日の日曜日の夕方に、作った作品を持ち寄り、それぞれの作品の意図やビジュアルを踏まえてインストール方法をディスカッションし、対話を深めながら空間を作りました。ボザール学内での展示はほとんどがそうなのですが、朝から搬入を始めて19時から展示を開 きます。オープニングではみんなワインやビールを持ち寄り、飲みながら作品の話をします。
ドローイングの授業では、学内授業だけでなく、ルーブルやクリュニー美術館で描く日もありました。どの授業にも言えることですが、その日の生徒と先生との対話によってフレキシブルに授業内容が変わっていく印象がありました。
住まいの見つけ方について
私の時は、ENSBAの寮に空きがなかったので自 分で探すしかありませんでした。オリンピックの時期と被っ ていたので、パリでの部屋探しはかなり難航しました。最初MixBなどの賃貸サイトで探していたのですが、フランス人の保証 人が必要だったりと、かなりハードルが高かったです。また、ビザ申請時に大家さんから部屋 の公共料金支払い証明書を送ってもらう必要があるので、そのようなことに対応してくれる人 かどうかも重要になります。私は検索サイトで詐欺に遭いかけてかなりメンタルをやられ、当 時ボザールから構想設計に留学に来ていた友達に相談したところ、ENSBAとENSADの学内 メールに私が部屋を探していることを共有してくれ、ENSADで英語の先生が所有している部屋 を貸してもらえることになりました。
現地での生活について
物価は高いですが、野菜などの食料は日本と変わらないくらいか、より安いときもあったので基本的に毎日自炊していました。アジア食品のスーパーもたくさんあるので、助かっていました。住んでいたアパートはパリ5区に位置し、かなり街 中なのでどこでも基本的に歩いて行くことができ、大学へは徒歩20分ほどでした。家の 近くに大きな市立大学があったので治安もよく、夜遅く帰宅したときも危ないと感じたことは なかったです。最寄りのスーパーがintermarcheだったため、週に1,2回買い出しに行っていました。 店内も広くて日用品も少し置いてありましたが、鼻セレブのようなティッシュはないので鼻炎の 人は持っていったほうがいいです。
10月に入ると一気に寒くなりました。大学内は暑いこともあるので、薄めの長袖と上着で過ごしていました。あまり冬服を持って来ていなかったのですが、安くて良い古着屋がたくさんあったので大丈夫でした。11月にベニスとマルセイユに旅行に行きました。どちらもとても美しい街で本当にいい経験になったのですが、パリに帰ってきてから少し気分が落ち込むことが多くなりました。 冬は朝起きても真っ暗で、日中もずっと曇っているので自分のメンタルが晴れない日が多く、これは予想外だったので自分的に少し焦りました。健康第一なので、制作などは一度ストップして、とにかく元気になるように努め、1週間くらいで体調は戻りました。友達と話したりすることも、とてもいい気分転換になりました。 曇りには要注意です…。
語学について
フランス語の授業が週に2回ありました。文法などはあまり細かく教わらず、日常や大学ですぐに使えるフレーズをとにかく反復練習して覚えていくものです。友達との会話や買い物をする時に、覚えたフランス語を積極的に使うようにしていました。私はフランス語はほとんどできない状態でしたが、ボザールは基本的にみんな 英語でのコミュニケーションが可能でした。 私の所属していたアトリエでは他にも留学生がいたので、基本的に全員英語でディスカッションを進めてくれました。一部、教授で全く英語を話さない人もいたようです が、そのアトリエに入ったとしてもなんとかなると思います。 フランス語を勉強していくことはもちろんとても大切ですが、英語でのディスカッションもか なりハイレベルなものが要求されるので、英語の勉強も忘れずにしておいたほうがいいと思い ます。
今後の派遣留学生に伝えたい注意事項など
留 学 が 決 まっ た ら す ぐ に Etudient en France (EEF)の 登 録 を 始 め て く だ さ い。 ENSBA か ら 受 け 入 れ 許 可証明書が送られてくるのが結構遅いので、メールで許可書をもらったらすぐにビザの準備を 始めたほうがいいです。 EEFの登録にも審査があり、ID付きの証明書が発行されるまで数日かかります。EEFのID付き証明書が発行された後、フランス大使館のビザ申請 の予約を取りました。夏はビザの申請数が多く、予約枠がほとんど埋まっています。早めに予 約をしたほうがいいです。大使館での申請は東京のフランス大使館まで行く必要があります。冒頭に書いた書類一式と申 請料€50、パスポート返却時用のレターパック赤が必要です。 私は大使館申請時に、滞在先のEDF証明書を準備しておらず、追加書類としてメールで送るよ う指示されました。1週間後にデータで証明書を提出し、翌日には審査が完了、その次の日に ビザ付きのパスポートが自宅に届きました。東京での申請で追加書類の提出が必要になると、その後フランス大使館とメールでやりとりし なければいけなくなりますが、メールの返信がめちゃくちゃ冷たくて心折れそうになるので、で きるだけ東京の申請で一発OKで終わらせれるように書類の準備を入念にした方がいいです! EDF証明書などは、フランス大使館が書いている必要書類一覧に載っていません。それでも提 出を求められることがあるので要注意です。 ビザの申請書類は結構年によって変わったりするので、最新の情報を必ずチェックしてください。
留学を終えての感想
大学院進学時から交換留学は視野に入れていたため、今回この機会をいただけたことに本当 に感謝しています。ヨーロッパの美術に実際に触れたことによって、初めて日本の美術や文化 について客観的に考えることができました。また、自分自身の制作テーマが言語における翻訳 について扱っていることもあり、現地では互いの第二言語を通じてコミュニケーションを取る という日常生活から多くのインスピレーションを受けることができました。 これまでに交換留学でパリから京芸に来ていた友人たちが現地で色々なところに連れて行った り、助けてくれる場面が多々あり、慣れない土地での生活の中で本当に心強かったです。個人 的な研究だけでなく、留学を通して築いた人間関係は、これからの作家生活においても続けて いくモチベーションに繋がると思っています。 アドバイスとして、私は 修了審査の直前に帰国し、精神的にも焦りがあったため、留学を検 討される際は、派遣時期について熟考したほうがいいと思います。