2025年度 国立高等美術学校(ENSBA)/フランス 森吉 由衣
学部
大学院美術研究科
年度
2025
氏名/専攻
森吉 由衣/大学院美術研究科美術専攻(版画)
プロフィール
学年 大学院美術研究科美術専攻(版画) 修士2回生
留学先 国立高等美術学校(École nationale supérieure des beaux-arts)/フランス
留学期間 2025年9月~2026年1月






留学行動記録
| 8月27日 | 日本出発・パリ到着 |
| 9月1日 | オリエンテーションとフランス語のテスト(あまりにもフランス語ができなかったため、私は免除になりました) |
| 9月2-8日 | フランス語の集中講義 |
| 9月16日 | 日帰り旅行(モン・サン・ミシェル) |
| 9月17‐21日 | 旅行(トスカーナ) |
| 9月23日 | Pagé先生、Sirjacq先生、Sarcevic先生とそれぞれ面談 |
| 9月24日 | 日帰り旅行(ブリュッセル) |
| 9月25日 | Renaut先生面談、テクニカルコース(技術を学ぶ授業)の面談 |
| 9月29日 | フランス語授業開始 |
| 9月30日 | 授業スタート |
| 10月1日 | 陶磁器テクニカルクラス面談 |
| 10月16~17日 | 旅行(ルーアン) |
| 10月21日 | 製本テクニカルクラス授業開始(以後2週間に1回) |
| 10月22日 | 所属アトリエで作品についてプレゼンテーション |
| 10月29日 | 所属アトリエで展示についての会議 |
| 11月6~8日 | 旅行(ロンドン) |
| 11月17-18日 | 所属アトリエの展示 |
| 11月29日-12月2日 | 旅行(バルセロナ) |
| 1月10-13日 | 旅行(南フランス) |
| 1月15‐16日 | 交換留学生展 |
| 1月20日 | フランス出国 |
| 1月21日 | 日本到着 |
派遣先大学で所属アトリエが決まるまで
(※事務局注 ENSBAは専攻に分かれておらず、教授のアトリエに所属するというシステムで授業が行われる。また教授のアトリエに所属するためには面談を経て教授から受入可の返事をもらう必要がある。)
所属アトリエを決める面談は、全て、ポートフォリオの事前送付が必要でした。私はフランス語ができないので英語のみで対応しましたが問題なかったです!
応募数の制限はありません。私はどの教授か選べきれず、4人の教授の面談を受けました。少し緊張しましたが、私が京芸で所属している版画専攻については質問などは特になく、ポートフォリオを見た感じで受け入れが決定していたようでした。Sarcevic先生はポートフォリオの説明がメインで、軽く質問がある程度でした。Pages先生の面談以外は、面談にゼミ生も一緒に参加していて、6対1みたいな感じだったので、ちょっと緊張しました。作品の説明をほぼしなかったり、拙い英語だったりでしたが、受け入れてくださったので、作品が共通言語になるんだな。と実感しました。 留学に向けて、言語の勉強は勿論とても大切ですが、語学留学とは違い、作品が語学力をカバーしてくれる存在になるんだと実感しました。また、私は、小さいテストピースを持っていきましたが、見せたらどのアトリエでも受けが良かったです。喋るのに自信がなかったので、持って行って良かったです。ですが、一方で、絵画系のアトリエでは、かなりハイレベルな語学力を求められるところもあるようで、語学力面で絵画系のアトリエ入るのに苦戦してる人も多いようです。
授業や制作について
専攻がなく、教員を1人選んでそのアトリエに入る仕組みが京芸とのとても大きな違いだと思います。もちろん、絵画、写真、パフォーマンス、映像などそれぞれの教授によってこのアトリエは絵画系、映像系と大まかには別れていますが、特に版画に関しては版画のことをずっと考えているような専攻はなく、あくまでも技法や手段としての版画であり、版画を起点としたものの考え方ではなく、それとは別にコンセプトを立てて制作している学生しかいなかったです。私の所属したアトリエの教授がサウンドを扱っているということもあり、サウンドを制作する学生も多かったです。 私は技法の話には少し飽き飽きしていたので版画という枠で縛られていない環境で制作できたのはとてもいい時間でした。もしかすると、技法をとても深く学びたい、この技法の話がもっとしたいという人には物足りないかもしれません。
授業も合評もなく、展示の前に話し合いをしたり、何週かに一度各々の作品プレゼンがあったりしました。教授は週に2回ほど来るので会ったら作品の相談ができます。
私は期間中に3回ほど面談を組んでもらって作品相談しましたが、明日とか今からやろうとか予定の立て方が日本と違って面白かったです。
また、11/18に所属アトリエの展示があったのですが、すごくしっかりした展示というよりは、とりあえず今作ってる、考えてるものを形にして見せる形式でした。私は陶磁器で作った小さい文字の作品を展示しました。展示コンセプト決めは、定期的に会議を行って決めました。アトリエ所属学生の共通点である、サウンドを1人一点制作することと、サウンドと関連する作品を制作することになりました。タイトル決めも定期的にやっていたのですが、かなりギリギリで、ポスターは当日に出来上がったり、前の展示の搬出スケジュールが押していて、会期が短くなったりと、日本の進め方と違うなと思いました。
テクニカルクラスでは陶磁器と製本を選んだのですが、陶磁器は授業という概念が全く存在しません。フリーな工房のようなスタンスで、行ったら行った分だけ制作できますが、逆に全く行かなくても何も言われないと思います。基本的なことも聞かなければ何も教えてくれません。逆に自分からやりたいことを聞けば、いくらでも教えてくれます。逆に製本の授業は2週間に1回集まる日が設定されていますが、こちらも授業という感じではなく、プロジェクトについての話し合いがメインで、来なくても遅れてもお咎めなしでした。こちらも相談すればたくさん教えてくれました。
一方友人が受講していたドローイングの授業は、割ときっちり授業日が設定されていたようで最終課題のようなものもあったようです。
このように大学の仕組みは本当に自由で、自分がやりたいと思えば、なんでもできますし、学生も教員も聞いたら優しくなんでも教えてくれますが、逆に向こうからなんでも与えられるということはもしかしたら少ないかもしれません。
私や一緒のアトリエに所属していた韓国人の友人は、この自由な環境に対し、面白く居心地が良いと感じていたのですが、他の学生の中ではきっちりした仕組みがないことに対して戸惑っているような声も聞きました。この大学の自由すぎる環境に対して、合う人合わない人、本当にハッキリと分かれるなと思いました。
語学について
オリエンテーション期間に語学のレベル分けテストがあり、4つのコースに分けられます。私は初級コースで、数字の数え方、簡単な文章の構成、発音など基礎的なことを学びましたが、あまり文法的なことはやらなかったので、初級といえど初級の感じがあまりしませんでした。フランス語はほぼ話せない状態で渡航し、それで困ったことはなかったですが、少しでも学んでいったらよかったかなと思いました。軽い挨拶や注文程度の会話はフランス語を使うように心がけていましたが、日常的に使っていたのはやはり英語でした。渡航前は勉強する時間があまり取れなかったなりに、作業中は英語のポッドキャストやYouTubeを聴く、インスタグラムのリールなども英語のものを見るようにするなどの形で毎日英語に触れるようにしていました。スピーキングに関しては、アルバイト先で英語を喋る機会が多かったので英会話だと思って積極的にコミュニケーションをとっていました。他の留学生と遊んだり会話する分には大丈夫ですが、ネイティブとの会話や授業では完璧に理解できないことが多かったのでもう少しちゃんと勉強しておけばよかったと思っています。
応募前から渡航準備を経て留学中の中で一番大変だったこと。また、それをふまえてこれから交換留学に応募される方へのアドバイス
大変なことは三つほどありました。一つ目は、何よりも家探しが一番大変で、多くの不安な時間を費やして辛かった記憶があります。思いつく解決策としては、受け入れが決まったらすぐCROU(※事務局注 フランスの教育省管轄下にある公的機関で、地方学生生活センターのこと)に応募することです。部屋を見たことがないので雰囲気は分かりませんが、立地もよく、家賃も信じられないくらい安く、CROUS経由以外でこの条件を探すのはほぼ不可能だと思いました。この応募に通れば家探しは一切しなくてすみます。留学生の中では留学期間中に引っ越しをしている学生も多かったです(私も一回しました)。決まりそうになければとりあえず、一ヶ月ほど仮の住まいを探して、その期間に別の場所をみてもいいかもです。10月くらいまでは正直大学に行くこともそんなにないので時間もありますし、大学へのアクセスもそこまで考えなくてもいいかもしれません。現地で周辺の環境をみて決定できるのはとてもいいと思います(ネットではここは危険だからやめておけというような情報をたくさん目にしますが、行ってみると拍子抜けするほど普通だったりするので)。
最初は、四ヶ月一気に住めるところが見つからず焦りましたが、二つのエリアで生活できてラッキーだったと今は思っています。
二つ目は水です。これは本当に人によると思うのですが、パリ到着後、疲れていたのかスーパーに売っている硬水を体が受け付けず、水が原因だと気づくまでとてもしんどかったです。念の為スーツケースに日本の水を入れておくか、スーパーで軟水を選んで飲んでもいいかもしれません。慣れたら大丈夫になり、水道水でもなんでも問題なく生活できました。
三つ目はAPLの申請です。APLは家賃補助で留学生でも応募することができます。私は10月に申請し、その後音沙汰なく帰国直前CAFの事務所まで行って手続きをしました。他の留学生も同じように申請してから音沙汰がないことがあったり、これがフランスの手続きの遅さのせいなのか、書類不備なのか(私の場合は書類不備でした)が分からず、不毛な時間を過ごしていました。ただ、今後も留学生が対象になるかは事前の確認が必須です。
後、細かいことですが、文房具系がとても高いので持っていっていたらよかったと思いました。私はカッター、ハサミ、定規すら持っていっていなかったので、現地で買う羽目になりました。100均で変えるようなものが現地では1000円以上したりして驚きました。その他、ペン、ノートも高いし日本の方がクオリティが高いと思いました。
留学を終えての感想
素晴らしい環境と、教授、友人に囲まれ本当に有意義な5ヶ月間を過ごすことができました。
パリでの経験と出会った人たち全てにとても感謝しています。
特に、ENSBAにおける、専攻という枠組みがない環境、また版画以外の技法に自由に挑戦できたことを通し、今まで固定されてきた制作スタイルや考え方を違う視点から見直すことで、自身の制作に新たな広がりをもたらすことができました。特に自分が所属したアトリエに所属できたこと、教授に出会えたことは自分にとって革命のようで、異なる経験、文化背景を持つ友人や教授との対話を通して、留学前に想像もしていなかったような、本当に多くの収穫を得ることができました。留学終了後もこのアトリエの展示に日本から参加してほしいと言ってくれたり本当に暖かい環境でした。あともう半年、ここに残って制作したかったです。また陶磁器に関しても、自分にとって新しい技法でしたが、異なる素材や歴史を通して、これまでの自分のコンセプトとの新たな繋がりが見え、版画だけでなく他の素材や技法を通して物事を考えるとても良い経験になりました。ENSBAの環境は、版画専攻内で行き詰まっていた自身の制作に対して、技法にとらわれない、自身の根幹のコンセプトを見つめ直す機会を与え、版画の可能性も尊重しつつ、それだけではない方法で制作を進めていく力を提示してくれた気がします。
この留学を通して、開かれた環境の中で自分の力で進んでいくことを学びました。パリのメトロのドアのように自分で開けなければ開かず、でも全ては自分の意思で開けようとすれば開くことができるのだと思います。日本にいながらもこの事を忘れず、そして日本にいるからこそできることを沢山学んで、また絶対にフランスに戻りたいです。最後に、このような機会を与えてくださった双方の大学、この経験を支えてくださった、家族、友人、教授、インターナショナルコーディネーターの方、本当にありがとうございました。
その他の今後の派遣留学生や交換留学応募を迷っている学生へ伝えたいアドバイス、メッセージなどあれば
私は留学行ってみたいな。と思っていながら、実際に行くぞと決めるまで時間がかかり、本当にギリギリで応募を決定しました。私は、留学は誰でも行きたいと思うものではないと思います。興味が全くない、行きたくない人もたくさんいると思います。そんな中で、行きたいと思っているのなら、挑戦してみたらいいと思います。手続き、お金、言語、現地での生活、制作(私は帰国後すぐに修了審査と卒制だったのですごく迷いました。)など行くか迷ってしまう要因はたくさんあります。私もこれらに悩まされましたし、過去の留学レポートを見れば見るほど、自分なんかができる気がしないと本当に思っていました。でもたくさんの人に相談に乗ってもらって、手続きもわからないなりにやって、お金の面では、留学関係の奨学金は全て応募を締め切っていたので、留学中でも受給できる奨学金に応募してみたり、卒制も現地で作ったり、最終的にはなんとかなるものだと思いました。乗り越える壁がたくさんあって、想像するだけで大変だと思いますが、それすらもいい経験だったと思っていますし、決して無駄な苦労や悩みではなかったです。 また、今回の留学応募を決定するにあたり、京芸に交換留学生としてフランスから来ていた友人たちの存在もとても大きかったです。もう一度私がフランスに行って、本当にお互いが「交換」留学できたらとても面白いと、こういう好奇心ですらも動機になりました。現地到着後も一人ではないということにとても救われたのも事実です。毎年留学生が色んなところから来ていると思います。是非最初の一歩を踏み出して仲良くなることをおすすめします!きっと海外からの留学生も現地の学生に話しかけられたら嬉しいと思います。こういう縁を大切にしてお互いに助け合えるのも交換留学ならではの経験だと思います。
